失踪宣告 【しっそうせんこく】 |
人が居所を去ったのち、長期間にわたって生死が不明である場合には、残された関係者はその後の生活を営む上でさまざまな制約を強いられる結果となる。
そこで民法は、法律上その人が死亡したものとみなす制度を設けており、これを「失踪宣告」と呼ぶ(民法第30条)。
失踪宣告には、居所を去った後7年間生死不明であることを要件とする「普通失踪」と死亡の原因となるべき危難(戦争や船舶の沈没など)に遭遇したことを要件とする「特別失踪」という2種類がある。
失踪宣告を受けた場合、普通失踪については7年間の生死不明の期間が経過した時点で、特別失踪については危難の去った時点において、その人が死亡したものとみなされる(民法第31条)
その結果、失踪宣告を受けた人について、死亡とみなされた時点から相続が開始することになる(民法882条)。
また死亡とみなされた時点において、婚姻(結婚)は当然に消滅する。
ただし姻族の関係(結婚によって生じた親戚関係)は当然に消滅するのではなく、配偶者が姻族関係の消滅の意思を表示する必要がある(民法728条)。
なお失踪宣告を受けるには、配偶者・相続人・保険金受取人などの利害関係者が家庭裁判所に請求する必要がある。要件を満たす請求があったとき、家庭裁判所は失踪の宣告をしなければならない(民法第30条)。
なおこのほかに、死亡が確実だが死体が確認できないという場合のために「認定死亡」という制度が用意されている(詳しくは認定死亡へ) |
失踪宣告の取消し 【しっそうせんこくのとりけし】 |
失踪宣告を受けた者が生存している場合(または失踪宣告によって死亡したとみなされる時期とは異なる時期に死亡していたことが判明した場合)には、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪宣告を取消さなければならない(民法第32条第1項本文)。
この失踪宣告の取消しは、失踪宣告を受けた者が死亡したとみなされた時点にまでさかのぼって、その効果を生ずる。具体的には、失踪宣告による死亡により発生した相続は無効となり、相続人は失踪者が生存していれば、相続財産を失踪者に返還する必要が生じる。
ただしこの点については、取消しの効果の制限という制度が設けられており、善意の相続人等が保護されている(詳しくは失踪宣告の取消しの効果の制限へ)。 |
失踪宣告の取消しの効果の制限 【しっそうせんこくのとりけしのこうかのせいげん】 |
失踪宣告の取消しにより、善意の利害関係者が不測の損害を被ることがないように、民法第32条では次の2つの制度により善意の利害関係者を保護している。
1:善意でなした行為は失踪宣告の取消しの影響を受けない(民法第32条第1項但書)
例えば、Aが失踪宣告により死亡とみなされ、Bがその財産を相続し、Bがその財産をCに売却したという場合には、BとCがともに善意であった(=Aの生存を知らなかった)ならば、財産の売却行為はAの失踪宣告の取消しの影響を受けない。従ってBCともに善意ならば、BC間の売買契約は、Aの生存に関係なく、有効なものとして扱われる。
2:直接取得者は、現存利益の範囲内で財産を返還すればよい(民法第32条第2項)
失踪宣告により直接的に財産を得た者(相続人、財産を遺贈された者、生命保険金の受取人など)は、失踪宣告の取消しにより財産を失う場合でも、現存利益の範囲内で財産を返還すればよいとされる。
例えば、Aが失踪宣告により死亡とみなされ、Bがその財産を相続した場合には、Bはその財産を現存利益の範囲内でAに返還すればよいとされている。
この場合、Bが善意であること(=Aの生存を知らなかったこと)が必要であるかどうかについては、民法学の通説は善意不要と解釈している(すなわちBが悪意でも財産全額の返還はしなくてよく、現存利益の返還でよい)。 |
実務経験 【じつむけいけん】 |
宅地建物取引主任者の登録の申請を行なう際に必要となる、宅地建物取引業に従事した経験のこと。
宅地建物取引主任者資格試験に合格した者が、都道府県知事の登録を申請しようとする場合には、「宅地建物の取引に関し2年以上の実務の経験」を有することが原則として必要である(宅地建物取引業法第18条第1項本文、施行規則第13条の15)。(※)
この「宅地建物の取引に関し2年以上の実務の経験」とは、「免許を受けた宅地建物取引業者としての経験または宅地建物取引業者の下で勤務していた経験」を指す。
具体的には「顧客への説明、物件の調査等具体の取引に関するもの」が実務の経験であり、「受付、秘書、いわゆる総務、人事、経理、財務等の一般管理部門等の顧客と直接の接触がない部門に所属した期間および単に補助的な事務に従事した期間」は実務の経験に算入しないことが適当とされている(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方「第18条関係」より)。
なお、都道府県知事への宅地建物取引主任者の登録の申請にあたっては、実務経験証明書(施行規則第14条の3、施行規則様式第5号の2)の提出が必要である(下注参照)。この実務経験証明書は実務経験先の宅地建物取引業者等が証明するものであり、在職期間、従業者証明書の番号などを記入する。
(※)宅地建物の取引に関し2年以上の実務の経験を有しない者であっても、(財)不動産流通近代化センターが実施する「実務講習」を受講しその修了証書を交付された場合には、その実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認定される。詳しくは「実務講習」へ。 |
実務講習 【じつむこうしゅう】 |
宅地建物取引主任者資格試験に合格した者が、宅地建物取引主任者の登録を申請しようとする場合には、宅地建物の取引に関して2年以上の実務経験を有することが必要である。
しかし、この実務経験を有しない場合でも、(財)不動産流通近代化センターが実施する講習を受講しその修了証明書を交付された場合には、実務経験を有する者と同等以上の能力を有していると認定され、宅地建物取引主任者の登録を受けることができるようになる。
このような講習を「実務講習」と呼んでいる(宅地建物取引業法第18条第1項本文、施行規則第14条の2)。
実務講習の申込み方法・日程等は、(財)不動産流通近代化センターが毎年公表している。
例年12月が申込受付期間、2月から4月にかけて通信講座が開講される。通信講座とあわせて、連続2日間のスクーリングを受講し、記述式問題(売買契約書、重要事項説明書)に解答、提出。さらにスクーリング終了後、総合試験問題に解答し提出する。これらにおいて所定の修了要件をすべて満たした者に対して「修了証書」及び「修了証明書」が7月頃に交付される。
修了証明書は、宅地建物取引主任者の登録の申請をする際の添付書類となるものである。修了証明書の有効期限は一般的に10年程度とされているが、各都道府県により有効期限が異なるので、注意したい。 |
指定区域(土壌汚染対策法の〜) 【していくいき(どじょうおせんたいさくほうの)】 |
土壌汚染状況調査の結果、その土地の土壌の特定有害物質による汚染の状態が、法定の基準に適合しないと認められる土地の区域のこと。(詳しくは「汚染土地の指定」へ) |
指定区域外土壌入換え 【していくいきがいどじょういれかえ】 |
汚染土壌について、土壌の直接摂取による健康被害の恐れがある場合における土壌汚染の除去等の措置のひとつ。
原則として地表から50センチメートル以上の汚染土壌の層の掘削除去を行ない、指定区域外より持ち込んだ汚染されていない他の土壌により埋め戻すものである。ただし、地表面を高くしても居住者の日常生活に著しい使用を生じないのであれば、50センチメートル以内の必要な範囲で土壌を掘削し、その上を50センチメートル以上の土壌の層により覆うこととしてもよい。(環境省の「土壌汚染対策法ガイドライン」を参考とした) |
指定区域内土壌入換え 【していくいきないどじょういれかえ】 |
汚染土壌について、土壌の直接摂取による健康被害の恐れがある場合における土壌汚染の除去等の措置のひとつ。
地表から50センチメートルの範囲にある汚染土壌を掘削し、当該指定区域内のいずれかの場所において地表から50センチメートル以上の深部に当該汚染土壌を埋め戻し、その上を指定区域内の汚染されていない土壌により50センチメートル覆うことである(環境省の「土壌汚染対策法ガイドライン」を参考とした) |
指定住宅紛争処理機関 【していじゅうたくふんそうしょりきかん】 |
建設住宅性能評価書が交付された住宅について、建設工事の請負契約または売買契約に関する紛争が発生した場合に、紛争の当事者の双方または一方からの申請により、紛争のあっせん・調停・仲裁の業務を行なう機関を「指定住宅紛争処理機関」という(住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第63条)。
指定住宅紛争処理機関になることができるのは、各都道府県の弁護士会または民法上の社団法人・財団法人に限定されている(同法第62条)。
平成15年4月現在では、各都道府県の弁護士会の内部に設置されている「住宅紛争審査会」(全国で51機関)が、この指定住宅紛争処理機関として国土交通大臣により指定されている。
ただし現時点では紛争当事者からの紛争処理の申請件数は年間数件程度という低水準にとどまっている。
このような指定住宅紛争処理機関の利用に関して次の点が重要と思われる。
1)建設住宅性能評価書が交付されている住宅であることを要する。
住宅性能評価を受けていない住宅は、指定住宅紛争処理機関による紛争処理を申請することができない。
また、住宅性能評価書には設計住宅性能評価書・建設住宅性能評価書の2種類が存在するが、設計住宅性能評価書だけが交付されている場合にはこの紛争処理を申請することができない。
2)紛争処理を申請する際の費用は原則として1万円。
住宅品質確保法69条および同法施行規則第104条・第105条により、紛争処理を申請する際の手数料は1万円とされている。ただし、鑑定等に要する費用を紛争の当事者が別途負担するように指定住宅紛争処理機関が定めることも可能とされている。
3)紛争処理の対象は、評価書に記載された事項に限定されない。
指定住宅紛争処理機関が扱う紛争の範囲は、建設住宅性能評価書に記載された事項に限定されない。例えば、住宅の欠陥を原因として居住者に健康被害が発生したような場合には、その住宅の欠陥の物的損害だけでなく、健康被害による損害についてもあっせん・調停・仲裁を申請することができる。
また例えば、共同住宅の建設住宅性能評価書において、重量床衝撃音などの「音環境に関すること」を全く検査せず、音環境の評価結果が存在していない事例であっても、上階からの衝撃音が大きく生活に支障をきたすような場合には、その住宅の欠陥に対してあっせん・調停・仲裁を申請することが可能である。
4)民事裁判への移行も可能。
あっせん・調停には和解契約としての効力が発生し、仲裁には民事訴訟の確定判決と同じ効力が発生するとされているが、そもそも紛争当事者の双方の合意がなければ、あっせん・調停・仲裁を行なうことはできない。
従って紛争当事者の双方が合意に至らない場合には、紛争当事者は通常どおりの民事訴訟を提起することができる。また指定住宅紛争処理機関による紛争処理を申請しないで、はじめから民事訴訟を提起することも当然可能である。 |
指定調査機関(土壌汚染対策法の〜) 【していちょうさきかん(どじょうおせんたいさくほうの〜)】 |
土壌汚染対策法第3条および第4条に定める土壌汚染状況調査では、土地所有者等は環境大臣が指定する者に調査をさせなければならない。このように環境大臣が指定する調査機関のことを「指定調査機関」という。(詳しくは「土壌汚染調査機関」) |