代価弁済 【だいかべんさい】 |
抵当権が付着している不動産(抵当不動産)が第三者に譲渡された場合に、債権者が自らの意思により、抵当不動産の所有者から債権の一部の弁済を受け取ることで、抵当権が消滅するという仕組みのこと。民法第377条に規定されている。
例えば、債権者Aが債務者Bに3,000万円を融資し、不動産Pに3,000万円の抵当権を設定したとする。その後Bがこの不動産Pを500万円で第三者Cへ売却したとする。本来この不動産Pの時価評価は3,500万円だが、3,000万円の抵当権が付着している分だけ売却価格が下げられているとする。
このとき債権者Aは、第三取得者Cに対して「Cは抵当権の代価として2,800万円をAに支払え」と請求することができる(2,800万円という金額は例えとして挙げたもので、事情により幾らにするかは債権者が決めてよい)。このAの請求に対してCがその金額を支払った場合には、抵当権が消滅し、Cは抵当権の付いていない不動産の所有者となる。このような仕組みが民法377条に規定する代価弁済である。
また、これによく似たものとして、民法第474条では「第三者弁済」という仕組みも設けられている。これは、第三者が他人の債務を肩代わりして弁済できるというものである。先程の例でいえば、第三取得者Cは債権の全額である3,000万円を、債権者の意思に関係なくいつでも債権者Aに支払うことができ(民法第474条第2項)、その結果として、Aの抵当権は原則として消滅するということである。
なお、債権者と第三取得者との利害を調整する仕組みとしては、代価弁済のほかに、民法第378条の抵当権消滅請求がある。(詳しくは抵当権消滅請求へ)
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大規模建築物 【だいきぼけんちくぶつ】 |
建築基準法6条1項2号と3号に定める一定の大規模な建築物のことを「大規模建築物」と呼んでいる。具体的には次の2種類がある。
1)木造の建築物で次の要件のどれか一つを満たすもの
a)高さが13mを超える
b)軒高が9mを超える
c)階数が3以上
d)延べ面積が500平方メートルを超える
2)木造以外の建築物で次の要件のどれか一つを満たすもの
a)階数が2以上
b)延べ面積が200平方メートルを超える
例えば鉄骨造の2階建ての建築物であっても、建築基準法の上では「大規模建築物」となるので、注意が必要である。 |
大規模修繕 【だいきぼしゅうぜん】 |
分譲マンションの性能を維持し老朽化を防止するために、計画的に行なわれる修繕であって、多額の費用を要する修繕のことである(これに対して多額の費用を要しない計画的な修繕は「小規模修繕」という)。
具体的には鉄部塗装工事・外壁塗装工事・屋上防水工事・給水管工事・排水管工事などの各種の修繕工事を指している。
これらの修繕工事を適切に行なうためには、分譲マンションの管理組合が「長期修繕計画」を作成し、修繕積立金を積み立て、大規模修繕を実施することが不可欠である。(修繕工事の実施時期・費用等について詳しくは長期修繕計画へ)
なお大規模修繕を実施するためには、管理組合の集会で大規模修繕の実施を可決しなければならない。
このとき必要とされる賛成が「区分所有者数の過半数かつ議決権の過半数」でよいのか、それとも「区分所有者数の4分の3以上かつ議決権の4分の3以上」の賛成が必要なのかについて、従来は区分所有法の規定がやや不明確であった。
そのため多くの管理組合では後日紛争が起きることを避けるために「4分の3以上」の賛成により大規模修繕を可決する方針を採用していた。このため大規模修繕を実施する時期が遅れるケースがあった。また区分所有者の中に大きな議決権の割合を有している人がいるときは、その人の賛成がないと事実上大規模修繕が可決できないケースもあった。
しかし2002年に区分所有法が改正されたことにより上記の賛成が「過半数」でよいことが明確化されたので、大規模修繕を実施することが従来よりも容易になった。
具体的には、2002年12月11日に区分所有法第17条が次のように改正・公布された。
(改正後の17条の要旨):共用部分の変更は4分の3以上の賛成で可決する。ただし「形状や効用が著しく変化しない場合」には、過半数の賛成で可決する。
つまり大規模修繕は、マンションの形状や効用を著しく変化させるものではなく、マンションの効用を維持するためのものであるので、過半数の賛成で実施できることになるのである。
なお上記の区分所有法第17条の改正は、公布日から6ヵ月以内に施行される予定である。 |
大規模の修繕 【だいきぼのしゅうぜん】 |
「建築物の主要構造部の一種以上について行なう過半の修繕」と定義されている(建築基準法2条14号)。 |
大規模の模様替 【だいきぼのもようがえ】 |
「建築物の主要構造部の一種以上について行なう過半の模様替え」と定義されている(建築基準法2条15号) |
大規模滅失 【だいきぼめっしつ】 |
区分所有建物において、建物の価格の2分の1を超える部分が、地震・火災等により滅失することを「大規模滅失」という。 |
第三者詐欺 【だいさんしゃさぎ】 |
詐欺により動機の錯誤に陥れられた者が、その錯誤にもとづいて意思表示を行なった場合には、その意思表示は取消すことができる(民法第96条第1項)。例えばAがBの詐欺によりBに対して土地の売却を行なった場合には、AはAB間の土地売買を、詐欺を理由として取消すことが可能である。
しかしながら、詐欺を行なうのは取引の相手方とは限らず、相手方以外の第三者が詐欺を行ない、本人を錯誤に陥れる場合がある。このような詐欺は第三者詐欺と呼ばれ、民法第96条第2項が適用される。
例えばAがCの詐欺によりBに対して土地の売却を行なった場合には、AはCの詐欺(第三者詐欺)のせいで錯誤に陥っているのであるから、本来ならば被害者であるAを保護し、AB間の土地売買を第三者詐欺を理由としてAが取消すことを可能にすべきであるとも考えられる。しかし、もしAの取消しを常に可能とするならば、詐欺に関与していないBの取引の安全を著しく害する結果となり不当である。
そこで民法第96条第2項では「相手方がその事実を知っていた場合に限り、本人は取消すことができる」と規定し、本人保護と相手方保護の調和を図っている。つまり、上記の例で、Cの詐欺によりAが錯誤に陥っていることをBが知っていたのならば、そのようなBを保護する必要は無いので、Aの取消しを可能にするという趣旨である。
なお、このようにAの取消しが可能な場合であっても、善意の第三者(例えば事情を知らないで上記のBから土地を購入してしまったD)が存在する場合には、AはDに対しては取消しの効果を主張することができないことに注意したい。
(詳しくは詐欺における第三者保護へ) |
第三取得者 【だいさんしゅとくしゃ】 |
抵当権が付着している不動産を、抵当権が付着した状態のままで取得した者のこと。
第三者取得者は、抵当権が付着している不動産(抵当不動産)の所有権を一応有してはいるが、債務の返済ができなくなった場合等では、債権者はいつでも抵当不動産を任意競売にかけることができる(抵当権の実行)。そのため、第三取得者は、所有権を喪失し、損害を受ける危険に常にさらされている。
そこで民法では、債権者(抵当権者)と第三取得者との利害の調和を図るために、「代価弁済」と「抵当権消滅請求」という2種類の仕組みを用意している。(詳しくは「代価弁済」「抵当権消滅請求」へ)
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第3種特定有害物質 【だいさんしゅとくていゆうがいぶっしつ】 |
土壌汚染対策法において、人の健康に被害を生ずる恐れが大きいものとして指定された25種類の特定有害物質のうち、農薬等に該当する5種類の物質のこと。
この第3種特定有害物質については、土壌汚染状況調査を実施するに当たっては、土壌溶出量調査を実施することとされている(土壌汚染対策法施行規則第5条)。
第3種特定有害物質は具体的には次の5種類である。
・有機リン化合物(パラチオン、メチルパラチオン、メチルジメトン、EPN)
・シマジン
・チウラム
・チオベンカルブ
・ポリ塩化ビフェニル(PCB) |
胎児の権利能力 【たいじのけんりのうりょく】 |
胎児は本来権利能力を持たない。しかし民法により、相続・遺贈・損害賠償については、胎児は「既に生れたるものとみなす」と規定されているため、この3つの場合に関しては例外的に権利能力を有するものとされている。(民法第721条、第886条、第965条)
従って、例えば、母の胎内に胎児があるとき、父が死亡したとすれば、胎児にも法定相続分が発生することとなる。また例えば、母の胎内に胎児があるとき、母が交通事故に遭ったとすれば、胎児にも損害賠償請求権が発生する。
なお胎児の権利能力は「生きて生まれたときに、相続分や損害賠償請求権の発生の時点にさかのぼって権利能力を取得する」と考えられている(判例。ただし有力な反対説あり)。
従って、判例に従うならば、母の胎内に胎児がある期間中には、胎児に権利能力が存在しない以上、胎児の法律行為を代理をすることは不可能である。そのため、母が胎児の法定代理人として遺産分割をすることや、損害賠償の示談交渉を行なうことは不可能とされている。 |